透明図
「おはよぅ!」

声がはずむ。

学校の正面玄関で、サキと会った。

「なんとか間に合ったみたい!」

私は切れた息を整えるように下を向き、ゼー、ハーと大きく呼吸した。

サキは笑ってる。

苦しかった胸が気持ち楽になる。

「今日も大変だね。」

「今日もって、こんなに走ったの久しぶりだよ!」

「そうだっけ?誰かさんはなんかいつも走ってるイメージあるなぁ」

靴をはきかえながら、そんな会話をした。

私は途中までサキの後ろをついていく。

サキの、綺麗なツヤのある、少しだけ色の抜けた髪が、風にあたってそよぐ。

その髪と、ほのかに香るものと、優しい声。

雑多な声は不思議と耳に入らなくなる私だけの時間。
そんな事を考えながら二人並んで廊下を歩く。

サキはニコニコ、ニコニコと。

今、サキは私のそばで何を考えているのだろうか。

こうゆう時、私はサキの心を覗けないでいる。

誰だって、そうなんじゃないかな。

知りたいことほど、必要な勇気が遠くに行くこと。
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