透明図
空が限りなく広がる瞬間がある。

大きな空の中で、薄く広がった雲が、ちぎれちぎれに漂っている時だ。

そんな時は、雲をたどってなるべく遠くまで眺めてみる。

すると、空の奥行きが、ありありとこの身に感じられ、あぁ、私はこんなにも無限の世界の中を生きていたんだなとワケもなく泣きそうになる。

空が無限に広がる月曜日の午後、ノラと出会った公園の中。

夕暮れは近づいている。

相変わらず緑が繁っていた。

芝生の中の所々にクローバーの葉がまざる。

相変わらず鳩の群れが、自由気ままにかっぽしていた。

なんだか前に見たより小さくなってしまったような。
私はここしばらく見ないふりしていたものに想いを馳せたが、なんだか切なくて忘れてしまおうとした。

その鳩を眺めるように、真っ白の生意気そうなノラは、いなかった。

いない。

どうして？

どうして、いないの？


空が急速に暗がりを増して閉じようとするのが感じられた。

夕暮れには、まだまだ早いはずなのに。

そうだよね、私は何もノラと約束なんかしてないよね。

言い聞かせるように、私は自分に問いかけた。

なんだか空虚になりゆく自分の胸に手をあてたまま、私の視線はその場でいつまでもさ迷い続けた。

あてどなく、過ぎ行く時間を感じながら。
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