透明図
雨の音は、一時の激しさを失い、ただ静かに響いていた。

それはまるで叶うことのない願いを聞くような、神聖な安らぎをもたらしてくれる。

私はベットの中で、晩春の雨を聞きながら、ノラのことを考えていた。

高く響く鳴き声や、甘えたように生意気な口調。

そんなものが、今この瞬間にはひどく懐かしいものように感じられた。

私は静かに自分の気持ちを理解する。

私、ノラに会いたいんだなぁ。

ぼんやりと目を開ける。夢との区別を失っていた私の意識が、徐々に現実を認識し始め、気持ちを軽くする。

残り火のようにいつまでもくすぶっていた私の気持ちが、少しずつ脈うつように感じられる。

私はいつまでもくすぶっているんだろう。

どうにも、どうしようにも、このもやもやした気持ちを、払拭できないでいる。

もう。

なんだか自分で自分を揺り動かさなきならないような気がする。

いつまでもこんなままじゃいられないよ!

わかってるじゃない。

私は今ノラのことを心配してて、なんだか何もできないままで。

でも、でもさ。

明日、また会いに行けばいいじゃない。

そしたらきっとノラはそこにいて、空は晴れててさ、私を見つけてくれてさ。

そんなものじゃないの?

私、わかんないけどそんなもんじゃないの?

うん、明日会いに行こう。
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