水中鉄道の夜2-終着駅-
 駅のホームに一度降りていながら、電車が発車する間際、いきなり戻ってきた俺に枝実さんはびっくりしていた。

 俺は自分でもなぜそんな事をしたのか判らなかったし、何て説明すればいいのかなんて判らなかったから、黙って枝実さんの横に腰を降ろすしかない。

 鷺沼で急行の待ち合わせの為に電車が止まった時、それまで何も言わず、ただ横に座っている俺に、枝実さんが微笑んだ。

「トール君、一緒にカレーでも食べない?」
「カレー?」
「今日の夕食はカレーにしようと思って、今朝作っておいたの」

 いつも夕食は1人で勝手に食べていると話していたから、誘ってくれたのだろう。
 俺は、黙って首を縦に振った。

 枝実さんを困らせてる。
 何だか、俺、ガキみたいだ・・・・・・。

「じゃ、急行に乗り換えよう?」

 そう言って枝実さんは俺の肩を軽く叩き、立ち上がる。
 俺は、言われるまま枝実さんの後についていった・・・・・・・。

 枝実さんの家は三軒茶屋からちょっと歩いた所にあり、狭い1DKのマンションだった。

 玄関を入ってすぐに奥の部屋に続く廊下のような場所に、右側にキッチン。
 左側にはユニットバスがあるようだ。
 そこを抜けて部屋に向かう。

 キッチンらしい場所から奥の部屋への間の仕切りなどは何もなく、続き部屋のようになっていた。

 8畳にぐらいの部屋にはベットとミニテーブルとタンスにTV、家具家電は少ないのにそれだけでも充分狭い感じだ。

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