水中鉄道の夜2-終着駅-
「ごめんね、狭いでしょう? ここってね、近くにある会社の寮と同じ造りで、今までこの間取りで不自由に思った事がなかったからここに決めちゃったんだけど、考えたら同じ寮に住んでいる者同士だったから気にならなかったのよね。今までここに上がった人もいなかったし、忙しいからちょっと引っ越す事も出来なくって・・・本当にごめんね」
「あ、いいえ」

 枝実さんの話からすれば、どうやらここに来たのは俺が初めてらしい。
 柔らかい色でまとめられた部屋は、温かみを感じさせるもので、枝実さんらしい感じがした。

 ITコンロに鍋をかけると、枝実さんは困った様に俺の顔を見た。

「?」

 何を言いたいのか判らない俺に、枝実さんは頬を染めて少しもじもじしたように体を揺らす。

「だから、あの・・・、着替えたいんだけど、後ろを向いててもらえる?」
「あ、はい」

 部屋に何の仕切りもない状態では、着替えたくても着替えられないだろう。

 俺が後ろを向くと、しばらくして着替えているらしい衣擦れの音が聞こえてきた。

「ごめんね、もう、いいよ」

 声をかけられ俺は振り返った。

 Gパンにロゴの入ったTシャツというスーツ以外の格好はもちろん、ラフな格好をした枝実さんは初めて見る。
 いつもスーツで重ね着しているからわからなかったけど、着やせするタイプなんだろう。

 枝実さんってすごく胸が大きかったんだな・・・。
 それに、ラフな格好をしている枝実さんはいつもより、ずっと童顔に見える。

 私服の枝実さんは、外見年齢は俺とそう変らないように見えた。




 赤いカレーが出てくるまで、そんなふうに過ごしたのだ。

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