水中鉄道の夜2-終着駅-
 枝実さんの作ったカレーは見た目ほど辛くはなく、スパイスがきいてて食がすすむ。

「おいしい?」
「はい、すごく。こんなに美味しいとは思わなかったです」
「ひどい、一言多いよ・・・」

 嬉しそうに聞いてきた枝実さんに正直に答えると、ショックを受けてしまったらしい。
 どうやら、料理は得意のようだ。

 食べている俺を、嬉しそうに見ている枝実さんに、心の中が温かくなるのを感じた。

 見守られる者の安心感。
 そして、それとは別に子供扱いされているようで面白くない気分・・・・・。

 なぜこんな感情が湧きあがるのか?

 子供のような純真さと、母親のようなすべてを包み込む優しさ。
 でも、それだけじゃ足りない。

 俺が明日一緒に出かけないかと誘うと、枝実さんは大人の笑顔を浮かべた。

「明日? ・・・そうね、どこかに遊びに行こうか?」

 大人の態度で応じる枝実さんに、俺の胸のどこかで音がする。

 今日の枝実さんは年上の女性らしい振る舞いしかしていない。
 前みたく子供っぽい所を見せないことが、枝実さんを遠く感じさせる。

 だからそんな枝実さんを崩したかった。

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