水中鉄道の夜2-終着駅-
「それじゃ、1度家に帰って待ち合わせるのも面倒ですから、ここに泊めてください」

 そう言うと、予想通り、枝実さんは目を大きく開いて首を振った。

「だ、だめだってば、家族の人も心配するし、ほら、ウチ狭いし、余分な布団もないよ」
「家族にはちゃんと連絡します。それにまだ温かいですからこのまま床でいいですよ。別に変なこととかする気はないんで安心して下さい」
「で、でも・・・」

 俺が困っている枝実さんの横にじりじりと移動すると、それに気が付いた枝実さんもじりじりと後退していく。

「枝実さんが襲って欲しいって言うなら話は別ですけど?」

 にっこり笑いながら、もう、これ以上逃げられないように枝実さんの腕を掴む。
 枝実さんは真っ赤になって、完全にオロオロとしていて可愛い。

「ト、トール君!」
「何ですか? ただ、明日も会うのに、わざわざ待ち合わせをするのが面倒だから泊めて欲しいって言っているだけじゃないですか」
「で、でも・・・」
「俺の事、信じられないですか?」
「信じるとか、信じないとかの次元の話じゃないでしょっ。そりゃ、トール君がそんな子じゃないって信じてるけど・・・」

 枝実さんって、もしサギにあたとしても、それでもまだ相手を信じそうなタイプだよね。
 そんなふうにすぐに誰かを信じたりするから、枝実さんは俺みたいな人間に捕まったりするんですよ?
 本当に世間知らずで、純粋で、危なっかしい人なんだから・・・・。

「信じてくれてるなら、問題ないじゃないですか」
「だから、そうゆう問題じゃなくて・・・・って、どうして押し倒してくるのっ!?」
「信じてくれるのなら、別に押し倒しても問題ないでしょう?」
「ええっ?」

 俺の下で、枝実さんは真っ赤な顔をして、焦っている。
 さっきみたいに、また大人の女性の態度をとったりしたら、何度でも押し倒してあげますからね、枝実さん?

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