水中鉄道の夜2-終着駅-
 両親や兄貴が疲れた顔をして帰宅するのを何度も見ている。
 そのことから学生の俺より、いろいろと大変なんだってことは判っていた。

 学生であんな顔をするヤツは見たことがないからだ・・・。

 大変さに変わりはないだなんて嘘だ。
 学生は所詮コドモの世界でしかない。

 責任も、苦労も何もかも、社会人にはかなわないだろう。

 俺はずっと枝実さんより子供で、経験や知識なんかのスキルが足りない。
 でも、それはこれからゆっくり身につくものなのだろう。

 ただ現在の俺じゃ、どんなスキルが付くのか想像が容易にできる・・・・。

 こんな子供のままじゃ、情けなくて嫌だ。
 俺は望まれて出来た子供でもなく、親は兄貴に期待をかけるあまり、俺は両親にないがしろにされてきたと感じていた。

 それが虚しくって、好きな事を好きな様にしてきた。

 その日が楽しければそれでいい。

 刹那的な楽しみだけを追い求めていた俺は、何の苦労も経験もしてこなかった。

 ただ、拗ねているだけの自分・・・・。
 ないがしろにされていると感じ、勝手に拗ねて何もしてこなかった俺が、どんなスキルを身につけられるのだろうか?

 今まで自分が子供だとは思った事はないけれど、今はすごく子供だと思える。

 俺は枝実さんと一緒にいるだけで、色々な事を考え、色々な事を知ってしまう。

 枝実さんは、まるで真実の姿を映す鏡のようだ。
 キレイに磨き上げられ、相手の姿をハッキリと映し出す大きな鏡・・・。

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