水中鉄道の夜2-終着駅-
 混乱しながらも俺はベットに上がり、枝実さんの横に座った。
 それを確認すると、枝実さんは嬉しそうに笑って自分のタオルケットにくるまる。

「悪いんだけど、電気消してくれる? 私はマメ電はあってもなくても気にならないような人だから、トール君の好きにしていいよ」
「はあ・・・」

 本当にこの人は27歳なのだろうか?
 これが素なら子供過ぎる。

 俺は素直に電気をマメ電球だけにしておくと、大判のタオルケットを上にかけて横になった。

「トール君、おやすみ」

 安心しきっている顔。
 マメ電球の灯りとすぐ真横に寝ているせいで、枝実さんの表情が良く見える。

「おやすみなさい・・・って、ねぇ、枝実サン?」
「何?」
「一応、俺も男なんだけど、判っていますよね?」

 何だか、非常に不安になってつい確認してしまった俺を、大きな瞳がパチパチと瞬きされ、びっくりした表情で見つめられる。

「もちろん判っているつもりだけど?」
「枝実サンは俺に襲われるとかの不安はないんですか?」
「うん」

 即答だ・・・・・・。

 あっさりと返される返事に、俺の方が脱力する。

「だって、ここに泊まるという時点で、どこで寝ようとそうゆう危険はあるわけじゃない? でも、トール君はそんな事するような子じゃないって思っているから、泊まるのを許可したんだし、だったら寒い床より狭いベットの方がいいかなって思ったの」
「そうですか・・・」

 そう説明されて枝実さんらしいと納得してしまうあたり、俺もかなり枝実さんの天然に慣れてきているようだ。

 疲れたように返事する俺に構わず、枝実さんはにこにこっと笑って、目を閉じてしまった。

 天然には勝てないってよく聞くけど、本当にたちが悪いと思うほど全然敵わない。
 でも、素直に自分の言葉を信じてもらえるというのは、悪いものじゃないんだと、今日は初めて知った・・・。

 横では、すでに寝息が聞こえる。
 寝つきがいいとは聞いていたけど、本当に早いんだな。

 俺は枝実さんと同じに、素直に目を閉じて眠りへと落ちていった。

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