水中鉄道の夜2-終着駅-
 自分で言うのもなんだけど、容姿がいいおかげで女に不自由はしたことがない。

 来るもの拒まず、去る者追わずの俺には、名前さえ覚えていないほどの人数の彼女がいる。

 みんなそれでもいいって言うし、ヒマで気が向けば、近くにいる子にちょっかいを出すような付き合い方だった。
 それが嫌なら俺のそばにこなければいいだけの事だし、嫌になれば離れていくだけの関係。

 重いのも、面倒なのもごめんだ。

 ゆるゆると立ち上る煙が流れ、昇ってはすぐに消えるだけの人間関係・・・・・。

 何もかもそれでいいと思っていた。

「よお、瀬戸内」
「内田」
「月曜日提出の英語Bの課題、もうやったんだろ?」

 帰り支度が終わった頃、隣のクラスの内田が俺のところにやって来た。

 内田が何を言いたいのかわかっている。
 俺はすぐにカバンを開け、英語Bのノートを黙って内田に渡した。

 内田のクラスは月曜日の1時限目に英語Bがある。

 もう、すでにやる気がないから俺にノートを借りに来たんだろう。

「サンキュ!」
「これで貸し5だぞ。もうそろそろ取り立てるからな」
「へいへい、お手柔らかに」
 
 いそいそと俺のノートを脇に挟んで、内田はニヤニヤと俺を見た。

「何だ?」
「伝言。科学室で待ってるってさ」

 それだけで、内田が何を言いたいのかわかった。

 俺は了承の意味を込めて軽く手を上げ、カバンを持って席を立つと教室を出て科学室へと向かう。

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