水中鉄道の夜2-終着駅-
 改札口を出てからちょっと歩いてターミナルに出ると、枝実さんが小さく手を振る。

「トール君、学校、頑張ってね。いってらっしゃい」
「枝実サンも仕事、頑張ってください」
「ありがとう」

 にっこり微笑んで枝実さんは、交差点の向こうに歩いて行く。

 背を向けて歩いて行く枝実さんに、少し物足りなさを感じる。
 もっと話したいからと枝実さんに呼び止めてしまいそうなのをぐっと堪えて、俺は学校に向かうバス停の方へと歩き出した。

 枝実さんは社会人で、俺は学生。
 けして重なる事のない世界で、電車の中にいる時だけ、時が重なるだけの関係。

 それ以上の時間を求める事は出来ないし、そんな事をすればどうなるのかは判っている。
 枝実さんは俺とは違って真面目な人だから、遊びで誰かと付き合うなんて出来ないだろう。
 こっちが軽い気持ちで接したりすれば、きっと傷つけてしまうのだから・・・。

 だから、このままでいい。
 毎朝、電車で挨拶するだけの関係のままが一番いい。

 でも。
 それが何だか寂しい感じがするのは何故なんだろうか・・・・・・。

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