水中鉄道の夜2-終着駅-
「あのっ・・・。私、瀬戸内先輩が好きなんです! 付き合って下さい!」

 放課後、呼び出されてみれば定番の告白。

 顔も知らない1年生。
 結構可愛いし、顔に自信ありって感じだ。

「俺、自分でも何人いるのか判らないほど彼女いるけど?」
「知っています! それでもいいんです! だから・・・」

 何がそれでもいいんだろうか?
 普通、自分の好きな相手が、本人さえ何人いるか判らないほど恋人がいたら、よくないんじゃないのか?

 こうやって言ってくる女の子達は、何を俺に求めているのだろう・・・。

 その恋人達と別れて、自分と付き合って欲しいと言ってくる子は今のところいない。

 けれど一緒にいれば遠まわしに嫉妬心も見せるし、他の女の子と別れて欲しいと匂わせてくる。

 結局それが面倒になり、何も言わないまま遊ばなくなっていく。
 そうやって付き合う女の子ばかりが増え、きちんと別れた女の子がほぼいない状態だ。

「悪いけど、好みじゃないから」
「え?」

 俺の噂を聞いていたのだろう。
 その噂とは違う俺の反応に、その子は驚いて固まっている。

 いつものパターンで行けば『じゃあ、いいよ』って言っているんだけど、もういいかげん何人いるかわからないような彼女を増やしても、馬鹿馬鹿しい気がしていたし、無意味なだけなのであっさりと断った。

 それに、自分で自分を可愛いって思っているヤツにろくなのはいない。
 どうせ自分だけは、他の女の子すべてと縁を切るような特別な存在になって、優越感を感じたいだけだろうし、そんなくだらない事に付き合うほどヒマでもないからだった。

「じゃ、悪いけど」

 そう言って帰ろうとして、腕を掴まれた。

「どうしてですか!?」

 俺、ちゃんと好みじゃないって理由を言ったよな?
 それなのにまだ何か聞きたいのか?

「アンタ、すげぇ性格悪そうな顔していてすごいブス。悪いけど、俺の周りにはキレイな子が見慣れる程たくさんいるんでね、もっと美人になって出直してきな」

 力いっぱい掴まれた腕を振り払い、冷たい一瞥をくれてやる。

 これで、もうしつこくはされないだろう。

 くだらない。
 ウザイ。

 何もかもが、もう、面倒だった。

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