水中鉄道の夜2-終着駅-
 まただ・・・・。

 もやもやとした気分が広がって、イライラとした気分になる。

 やっと話し終わったのか、会計を済ませた枝実さんが笑顔で俺に振り返った。

「待たせちゃってごめんね、トール君」
「いえ・・・」

 急にもやもやした気分がすっきりとする。

「何を買ったんですか?」
「ん? ああ、ガーデンズって知ってる?」
「いいえ」

 店を出て、枝実さんがどんな歌なのか説明しながら駅へと向かう。

 CDショップから駅へはそんなに離れていないから、すぐについた。

 2人で乗り込んだ電車は各駅停車だったので、俺の降りる駅までは少し時間がかかる。
 急行なら1駅目だけど、各駅ならその間にいくつか停まる駅があって6個目になるからだ。

 それなのに藤が丘、市ヶ尾・・・・とどんどん俺の降りる駅が近づいていく。

「じゃあトール君、また月曜日ね」

 降りる駅に着くと、そう笑って俺に小さく手を振った。
 何だか、胸の辺りが少し痛む感じがしながら、俺は枝実さんに頭を下げると、ホームへと降りる。

 明日は俺も学校がなく、また枝実さんに会えるのは3日後の月曜日だ。

 ホームにベルが鳴り響いた時、俺はとっさに振り返ると、ドアが閉まる直前に車内に身を滑り込ませた。

 自分でも何故そんな事をしたのか判らない。

 ただ・・・・。
 ただ、胸が痛かったから・・・・・・。

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