白死
沈黙がその場を支配した。
たった今やってきた兵士が何を言ったのか理解できていないのだろう。
当然というべきか、大佐も戸惑っている。
しかし、兵士は構わず報告を続けた。

「先程我が偵察部隊が視察に行ったとき戦闘は終わっており、残っていたのは敵兵の死体だけでした。」
「……。」
「さらに敵は武器を使った形跡がありましたが、仲間割れをしたわけではありません。」
「何故言い切れる?」
「そ、それが…。」
「?」
「敵兵の死体全てが首をもぎ取られたか、心臓を抉り取られていました。」

我慢の限界がきたのだろう。
大佐は怒鳴り声を上げた。

「貴様はさっきから何を訳の分からぬことをごちゃごちゃと言っている。あー、首がもぎ取られた?心臓が抉り取られた?馬鹿も休み休み言え。そんなくだらぬ嘘を言う暇があるのなら、何故軍のために働かないんだ。」「し、しかし。」
「上官に意見をするつもりか。軍曹ごときが偉くなったものだ。」

キレてしまった大佐は、軍曹に意見をする暇も与えずまくし立ている。
しかし大佐の意見は最もだ。
あの軍曹の言ったことはいささか現実味にかける。
しかしこんなときにするような報告でもない。
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