生徒会長に任命します!〜会長だって恋する乙女?!〜
坂桑家に着き、玄関に入れば綺麗に正座したお手伝いさんが頭を下げる。
その様子に千紗は嫌がり、すたすたと廊下を歩く。
前からやってきた葛城さんに駆け寄り、何やら話をしているみたいだけど何を話しているかは分からない。
「タツキ、私の部屋で待ってて?」
「うん、分かった」
少し緊張気味の千紗に促され部屋に入れば、この間と見間違えるくらい綺麗になっていた。
爪磨ぎにされたベッドはそのままだけど、新しいカーテンに新しい壁紙。
おぉ、と感心していればなんだかトイレに行きたくなった。
静かに引き戸をスライドさせ、トイレに向かう。
廊下の真ん中辺りにあるトイレに着き、ドアを開けようと窪みに手をかけた時。
この廊下の突き当たりを、たぶん右に曲がったところで、誰か話しているらしい。
立ち聞きなんて趣味を持ち合わせていないため、手に力を入れようと思ったのに。
「…………なんでよ。なんで?!どうして、今年も……」
悲痛な千紗の声が聞こえてきて、トイレに入ろうと思えない。