生徒会長に任命します!〜会長だって恋する乙女?!〜


 坂桑家と長谷川家、両家での食事会の時。

 久しぶりに会ったタツキは、昔と変わらない笑顔を私に向けたんだ。

 その笑顔は、自然と私を安心させるもので。

 私が怖いのは『佐野泰明』であって『男』ではないんだと。

 この時初めて思うことができた。

 騒がしくなってきた教室に脚を踏み込み、自分の席に向かう。

 このうるさい感じが、妙に落ち着く。

 「おはよー」と眠そうな声。

 ふと、窓際の席に視線を遣ると、机に突っ伏して顔だけを上げる祥也の姿。

「……おはよう」

「何かあった?」

「別に?それより、あの電話、なんなのよ」

「探してくれる気になった?」

「ならないわよっ」

 いつもと変わらない朝に安心してしまうのは、やっぱり。

 アイツを恐れているから。

 授業のチャイムが鳴るギリギリ前に、腑に落ちない、という顔をしたミドリがやってきた。

 私を見て、一瞬泣きそうになったが、それを堪えて無理やり笑う。

 ミドリにそんな顔をさせたくない。

 そのためには、何をすべきなの?


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