生徒会長に任命します!〜会長だって恋する乙女?!〜
やってきた春のオマケは嵐



 白い靄(もや)の向こうから。

 すらりとした人影が揺れる。

 目を凝らして見るたびに、近づいてくる“それ”から気味悪い笑い声が響く。

 靄が切れたその先には。

 赤いチューリップの花束を持った、佐野泰明の姿があった。

『千紗……。迎えに来たよ』

 愛しそうに私を見つめる表情(かお)に、一生懸命首を横に振る私。

 そんな私を見た佐野は、ガラリと表情を一変させた。

『主人に逆らっちゃいけないよ』

 佐野の周りの黒い煙が、私の体へとのびてくる。

 さぁーっと冷たい感覚と溢れだす恐怖に、涙が止まらない。

 動けないでいる私の腕を佐野が掴む直前。

「………っ!」

 飛び起きた私は、息があがって少し汗ばんでいる。

 あぁ、夢だったんだ、と安心したのもつかの間、吐き気が私を襲った。


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