時には、こんな始まり方も
二人とも無言のまま、駅に向かって歩いていた。


さっきはひんやりして気持ち良かった空気も、今は冷たく感じる。




マサ君何考えてるのかな?

もうこのまま帰るのかな?

一睡もしてないって言ってたし、眠いのかな?



少し前を歩くマサ君の背中が遠く感じた。

さっきは繋いでくれた手が今は空いたままで、風に当たってどんどん冷えていく。


マサ君。

ねえ、マサ君。

どうして何も言ってくれないの?


このまま家に帰るなんて嫌だよ!

お願いだから何か言ってよ。


どんどん不安が押し寄せてきて、瞳には涙が溜まってくる。


視界が滲んでぼやけてきた時、マサ君が振り返った。

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