貴方に捧ぐ初恋
「そうだ、中田、今日で塾やめるんだよな?」
「そうだけど…。」
そう聞くのは渡部。
持っているのは分厚い文庫本。
「そうかぁ…。俺と一緒だな。」
「そうなんだ。ところで、持ってる本って?」
そう聞くと、嬉しそうに言った。
「この本、すごい良いんだ。中田も読むか?」
「借りたいけど、読めるかわかんないし…」
「返すのはいつでも良いから!!一度読んでみろよ。良いぞ。」
そうは言ってくれるけど、申し訳なくて言ってしまった。
「ゴメン。悪いし良いよ。いつ返せるか分からないし…。」
「だからいつでも良いって言ってるだろ?高校もおんなじなんだし…。」