チョコと焼酎~   st.valentin



キッチンに行って、野菜を切っている竜二の隣に並ぶ。


「野菜も持ってきたんだ」



「おう。

帰ってきたばっかで、冷蔵庫空だと思って。」


手を止めずに答える。

ホント、良く気が利くヤツだ。


「あっ、お土産買ってきてやったから。


カステラ」


思いっきり笑顔でこっちを向いた。


私のあんな顔見たのに、いつも通り笑ってくれるんだね。


「マジ?

ザラメたっぷり?」


カステラの底に付いてるザラメが好きらしい。



「おうよ。

有り難く思えよ」



肘で竜二のお腹をつついて、カセットコンロと大きな鍋をコタツに運んだ。



鍋を挟んでコタツに向かい合わせに座ると、妙に緊張する。



何が、頑張れ!よ。


無理!



結局私は、竜二が話し出さない様に、バスケや、お笑い芸人や、ワイドショーネタや、どうでも良い話をひとりでしゃべってた。


カニほじりながら喋るのって、大変よ。


無口になる鍋第1位!なのに。


カニの味さえよくわからない位、必死で話題を探す。


話題が尽きた私は、疲れたからって、カニ雑炊を作っている竜二を、とうとう追い出してしまった。




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