500年の復讐


 さて、1人残されてしまった。何をしていよう。
 なんとなく中庭へ足を伸ばしてみた。あそこには私の"生まれた"場所がある。
 青々とした草原が四方の煉瓦の壁に囲まれている。芝生は朝露を吸っていて頭を下げている。踏むと足跡がついておもしろい。
 孤児院の敷地は私たちが暮らしていた本館と、古い巨木の横に小さな教会がある。
 巨木は500年前に植えられた。
 樹の前に立ち、根元を見る。その根元に私は埋められた。
 
 此処が、私の生まれた場所。

 樹に触れ目を閉じると何か、不思議な感覚に襲われた。何か、樹から力を貰っているというか、昔のことが流れてくる。
「何を泣いてるのです?」
 突然声をかけられ振り向くと神父が立っていた。
「あなたは―――サーシャですね。シスターから聞きましたよ。今日孤児院を発つとか」
「えぇ。それで神父様、私に何か?」
「いえ、ただあなたが泣いているので何かと思いまして。一度、あなたと話してみたかった。少し時間はありますか?」
「はい、お、お父さんが手続きをしてるので、まだ大丈夫だと思います」
「それは良かった。では、教会に行きましょう。あそこなら人は来ない」
 私は神父に着いていった。何を話したいのだろう。
 それにしてもなぜ涙が出たのだろう?



 


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