500年の復讐


「この女性は魔女疑惑をかけられて亡くなっています。彼は多くの懺悔に"なぜ彼女を殺してしまったのか?"と問いかけているんです。彼は異端審問官だったらしいのです」
 異端審問官?
 コイツ、異端審問官の子孫か?
「最期彼は自問自答を繰り返し、マリア像の前で自殺したそうです」
 そんなことがあったのか。
「私は貴女が何かしそうで怖いのです。この本にあるサーシャと重ねてしまって―――ただ名前が同じだけなのに―――」
 異端審問官は本を遺していたのか。それを彼は目を通している。私はまたほくそ笑み、
「"怖い"っていうのは、何かしたんですか?」
「した―――ではなく、何か不吉な言葉を彼女は遺したそうです。"私は甦り、復讐の雨を降らしてやる"――――何か感じたのでしょう」
 彼は私が笑い出したのを目を大きくして見ていた。声が反響し合う。私は笑い涙を拭い、
「復讐?甦る?そんな大昔の人が甦って復讐の雨を降らす?ふははっ。そんなの冗談にも程があるわよ」
 そんなことを異端審問官は記していたのか。さすがだわあの男。
「そんな冗談残した人が私にそっくり?名前が同じだから?魅力を感じるから?そんなの偶然よ。こっちが迷惑!」
「―――そ、そうですよね、貴女がそんな復讐なんてくだらないことしませんよね」
 彼は弁解したが、まだ腑に落ちないようだった。



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