500年の復讐
復讐と剃刀


 目が覚めると、そこは家具の少ない簡素な部屋だった。男が一人、暖炉の前の三脚椅子に座っている。 
 ここはどこだろう―――。
 男が起きたのに気づき、こちらに体を向ける。
 男はただ、ほくそ笑んでいるだけで、何も喋ろうとしない。しかし、『あの』彼なのだ。さっき殺人を犯した――――。
「そんな怖い顔しないでよ」
 日が落ち、雨が窓ガラスを叩いている。暖炉の炎は赤々と燃えている。しかし明かりがないせいか、あまり暖かさを感じない。
「――――君って、『あれ』を見た?」
 あまりに唐突な質問でどう答えればいいか迷う。見たと言えば彼は私を殺すのだろうか?
 あの異端審問官に似ている。もし私を殺すとしたら彼は無残に殺すだろう。
 沈黙が支配する寒々とした部屋。
「――――――まぁ、突然言われても話せないよね」
「―――――見たと言ったら、お前はどうする?私を殺すか?」




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