【短集・ホラー】白紙の小説
・MOTHER
お母さんが
灰皿を投げつける、
なんて家庭は
そうそう無いと思う
僕は、机に置いてあったお母さんの指輪を落としてしまったがために、灰皿を投げつけられた。
運良く急所には当たらなかったが、それはワザトだと思う。
お母さんが僕を殺した、なんて世間に知られたら大変だから。
僕には
お父さんが居ない。
僕がもっと小さい頃に、お母さんと別れてしまった。
お父さんは、たまに僕に会いにきてくれたけど、もう来なくなった。
お父さんと別れた頃に、お母さんが僕に暴力を振るい始めた。
学校の授業で使うから、お母さんの部屋にあるハサミを持ち出そうとした。
そしたらお母さんに見つかって、頬を叩かれたのだ。
無断で入ったのが悪かったのか、僕は"ごめんなさい"と何度も謝った。
それでも許してくれないお母さんに、土下座をして謝ったら、やっと許してくれた。
それが謝るってことなのかと思っていた。
だが違っていた。
ある友達が、女の子にちょっかいを出して先生に叱られていた。
すると友達は女の子に、"ごめん"と頭を下げただけだった。
僕はその光景が目について離れなかった。