【短集・ホラー】白紙の小説
しかし、何故……
周りには誰も居ない?
この医者1人……
俺を観ていたのか?
もしかしたら、今、鳶仲間や恋人は、まだ来てないのかもしれない。
そう考えた。
「しかし……やけに騒がしいですね……」
病室の外が騒がしい。
「ええ。今日はこの部屋の隣の方が退院されることになりましてね。皆で大喜びしているんです」
そう言う医者は、
俺をじっと見据えた
そう言えば何だか……先ほどからずっとこの医者に見られている。
当たり前と言えば当たり前だが、見方が少しおかしい。
俺と話しているなら俺の瞳を見れば良いものの、医者は俺の体をじっと見ている。
足の先から頭のてっぺんまで舐めるように見られているような…………
そういえば少し
気味悪い病院だ。
病室の開いた扉から見えるカレンダーに、異常な数の赤い丸が書き込まれている。
何の印なんだろうと思っていると、医者が俺の体を見つめたまま口を開いた。
「では手術しますかな」