【短集・ホラー】白紙の小説
「あなたは私の孫によく似ています。だから……本当は売りたくなんかない……。それに、この体にこのメスで傷をつけると、魂まで死にます」
「っ!?!!?」
「あなたは……本当に恋人や友人達に愛されているんですね……。私は生前、冷たい人間だったので、誰も病院に来なかった……」
医者の目が潤む。
「ごめんなさい……。
私……いや、ここに居た医者達は、皆……患者を殺します。死体マニアに売るため、手術をすれば……魂まで死にます……。だから私達は医者という名の殺人鬼です」
とうとう医者は
涙を流した
「生前、医者だった頃は……人を生かすために、人を元気にするために手術をしていた……なのに…今は人を殺すために手術をしている……」
俺の足に突きつけたメスを持つ手が震えている。
「…殺して下さい」
俺の口からは自然と
こんな言葉が出ていた
「この病院の医者になった限り、この病院の医者にならなくちゃ………」
震える声で言うと
医者は涙を流したまま
そっと微笑んだ
「本当に孫によく似ている………。あなたみたいな方に、魂が死ぬ前に出会えて良かった」
医者はそう言って
「安らかに…………」
俺の体に
メスを入れた
…………Fin