空のいろ
 そんな彼との出会いは、突然やってきた。

 私はよく昼休みに屋上で時間を潰している。雑誌を持っていったり、うとうとしたり、天気のいい日はとても気持ちがいい。

 今日も、昼食を食べ終えた私は、屋上のドアを開ける。

 フェンスの側まで行き、大きく伸びをする。

「ん~、今日もいい天気」

「本当だな」

 不意に聞こえてきた男性の声に、私は驚いて振り向いた。

 そこにいたのは、私が陰ながら見て勇気をもらっていた笹木課長だった。

「笹木課長!?いらしたんですか?」

「ああ。先客がいるとは思わなかったが」

 私は、恥ずかしくて顔が赤くなった気がして俯いた。

「えっと、君は経理課の子だよね」

「あ、はいっ!桜です」

 私の事を知っててくれたことが嬉しくて、元気に返事をしたら笑われた。

「元気だな、桜さんは」



 初めての会話。

 その日見た空は、今でも忘れられない。
 今まで見た中で、いちばん綺麗な青だった。絵の具で塗ったように、色が薄れることも濃くなることもなく、どこまでも青だった。








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