空のいろ
 そんな日々の中で、私も仕事に慣れてきた。
 部署内の人たちとも打ち解けて、仕事帰りに飲みにいくようにもなった。





 それでも、お昼休みだけは、屋上へ行く。


「桜さんって、なんでいつも屋上にくるの?」

ーードクン

 笹木課長の直球に私は動揺するのを必死で堪える。

「笹木課長は、どうしてですか?」

「俺?俺は、空を見に来てるんだ」

 笹木課長は、空を仰いで言った。

「空?」

「ああ。大きな空を見ると、自分の悩みなんてちっぽけだって思えるから」

「悩みなんてあるんですか?」

「そりゃあ、悩みくらい誰でもあるだろ?」

 苦笑した笹木課長を見て、頭の悪い質問をしたと後悔した。

「ですよね」

「だから、元気をもらいに来てるんだ」

「…私も。私もです」

 だけど、私が元気をもらってるのは、あなたです。

 決して、口にはしない。










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