空のいろ
「桜さん、今日定時に終わる?予定なかったら、飲みに行かない?」

 同僚の相原さんに誘われ、駅前のバーに入った。

 相原さんは、気さくで明るい誰にでも好かれそうな女性。

「桜さん。私ね、実はプロポーズされてるの」

「え?おめでとう」

 いきなりの話に驚きながらも、祝福の言葉を口にする。

 だけど、相原さんの表情はどこか幸せそうじゃない。

「ありがとう。でも…、でもね、迷ってるの。彼、私に仕事辞めてほしいって。でも、私は辞めたくない」

「そうなんだ。彼にもう1回話してみたら?」

 いろんな悩みがあるんだ。
 お互いに好きなのに、相手を理解してあげられないなんて悲しい。

 私は少し悩んで、相原さんに打ち明けることにした。

「私、私ね、妻子ある人が好きなの」

 相原さんは驚いて、私の顔を見ている。

「言うつもり、ないから。困らせたくないの」

 私は、笑顔を作って言葉を続ける。

「だから、私は相思相愛ってすごいと思うよ」

「そっか、切ないね…」

「やだ、そんな顔しないで」

 その後、しばらくたわいもない話をして相原と別れた。









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