愛しい遺書
「お前らまだ踊ってろよ!!」

あたしの返事を聞き損ねたショウジは笑いながら、半分本気でカイとケンタに言った。

「そう言われても男同士でチークはキツいっす!!」

ホールに響いていた上げ上げな曲はいつのまにかスローなチークに変わっていた。この曲になるという事は、そろそろ閉店の合図。

「マナカは?」

そう言ってホールに目をやると、キョウヘイの首に腕を回し、楽しそうに踊っていた。

「お二人も踊ったらどうすか?」

カイがニヤニヤしながらあたしとショウジを促した。

「……踊るか?」

「うん。いいよ」

そう言うとショウジはあたしの手を引っ張り、ホールに入った。

手を繋いでるあたしとショウジを、マナカは嬉しそうにニヤけて見ていた。

ショウジは自然にあたしの腰に腕を回し、あたしはショウジの首に腕を回した。

「……今日、オレ送ってく」

チークの誘いをOKした事で確信したショウジは、もうあたしの気持ちを伺う事はしなかった。





曲がフェードアウトするにつれ、店内の照明もミラーボールからオレンジ色のダウンライトに変わり、ホールは明るくなった。

あたしはショウジからゆっくり離れると、マナカの方を見た。

マナカはキョウヘイと手を繋いだままあたしのところに来ると、

「キョウヘイ送ってく事にした!」

と嬉しそうに言った。

「キキは?送って貰うんでしょ?」

にやけながら聞いてくるマナカに、

「うん。オレ送ってく」

と、ショウジが答えた。

4人でテーブルに戻ると、カイとケンタの間には見知らぬ女の子が2人挟まれていた。

「アイツらちゃっかりナンパしてるし!」

キョウヘイが面白そうに言った。

マナカが初対面の彼女たちに、「はじめまして!」と言うから、あたしも笑っておじぎした。

「オレ、マナカに送ってもらうから。ショウジは?」

キョウヘイが言うと、

「オレん家まで乗せてって」

と、ショウジが言った。


カイとケンタがナンパした女の子たちも含め、8人で駐車場に向かって歩いた。ショウジとキョウヘイが並んで歩く後ろを、マナカとあたしは歩いた。

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