愛しい遺書
「じゃあな。気ぃつけろよ」

キョウヘイが助手席側に身を乗り出して言った。

「お前もな」

ショウジはそう言って片手を上げた。

マナカたちはゆっくりと走り去った。

「車乗って」

ショウジはあたしを車に促した。あたしは「うん」と言って助手席に乗った。

大きな音量で流れている曲を低くすると、
「まだ眠い?」
と、ショウジが聞いてきた。

「……?」

その先の言葉が予想つかないあたしは黙ってショウジを伺った。

「腹へらね?」

「……へった」

「この辺オールでやってんのマックしかねえけど、いい?」

「マック大好き」

あたしは頷きながら言うと、ショウジが優しい目で微笑み、車を走らせた。

心地よいBGMの中、少しだけ沈黙が続いた。ショウジと出会わなければ来る事のなかったこの町を、あたしは珍しいものを見るように眺めていた。

いい加減会話しないと。ひとり『世界の車窓から』気分に浸っていたあたしは我に返った。

「どうする?」

吸っていた煙草を灰皿で揉み消しながらショウジが言った。

「中入る?それともドライブスルーにする?」

気付けばマックはもうすぐだった。

「ショウジはどっちがいい?」

あたしはどっちでもいいと思いながら聞き返した。

「ここって中禁煙なんだよな。ぶっちゃけドライブスルーがいい」

「じゃあ、そうしよ」

ショウジはドライブスルーに入った。

一通り注文すると、さすが早朝だけあってすぐ準備できた。バッグから財布を取り出し、開こうとするとショウジがあたしの手を止めて「オレ出すから」と言った。

「……ありがと」

あたしは正直に甘える事にした。

店員から品物を受け取ると、ショウジは店の駐車場に車を止めた。

「ここで食ってくか」

そう言って袋を開こうとしたショウジに、あたしは聞いた。

「あたしん家でたべる?」

別に深い意味はない。ただ、送ってもらった挙げ句にマックまで奢ってもらうのは、なんとなく申し訳なく感じたから。

「いいの?」

ショウジは少しびっくりしたように言った。

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