愛しい遺書
「うん。襲わないから安心して」

そう言うとショウジは大きな声で笑った。

「キキなら襲われてもいいよ。……マジでいいの?」

「早く行ってあったかいうちに食べよ」

そう言ってあたしはショウジから袋を取り上げた。

ショウジは嬉しそうな顔をして、車を出した。

あたしたちは普通に世間話をした。ちゃんとナビしながら。20分程であたしのアパートに着いた。

空いてる所に車を止めて、2人で降りた。たいした重くもないマックの袋をショウジは持ってくれた。部屋に着くと鍵を開けた。

「どうぞ」

あたしは先にショウジを入れた。
ショウジは「おじゃまします」と言って中に入った。

リビングに通すと先にカーテンを開けた。

「1人で暮らしてんの?」

「うん。……なんで?」

「これ、メゾネットだろ?1人で暮らすには広いな」

「広いけど家賃安かったから……。居間も寝室も一緒だと人呼びづらいし」

「だよな。いいな。ここ」

そう言うとショウジはソファーに座った。

あたしも向かいのソファーに座り、マックの袋を開けて2人分取り出した。あたしは「いただきます」と言って食べ始めた。

「ショウジは家族と暮らしてんの?」

「なんで?」

「一軒家だったから」

「いや……オレ1人」

「建てたの?」

「親がね。元々兄貴が結婚するってんで建てたんだけど、いざできたら女と色々あって別れちまって……んで、勿体ないからオレが入ったってワケ」

「新築に1人暮らし……いいじゃん」

「よかねぇよ。掃除は大変だし、家賃とか言って毎月のローン半分払ってるし。賃貸と変わんねえ」

「……掃除してくれる彼女とかいないの?」

「……いた。でも追い出した」

「なんで?」

「付き合ってすぐ一緒に暮らしたんだけど、急に嫁ぶってさ。最初は可愛いなって思ったんだけど、段々口うるさくなってよ。お前はオレのかーちゃんかよ?って思ったらウザくなった。んで、そいつがたまたま友達と泊まり掛けで遊びに行くっつう日があったからキョウヘイとかカイたち呼んで、女の荷物全部、車庫に出して鍵も変えちまった」
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