愛しい遺書
漢字の書き方を教えようとしたら、
「オレ、キキで登録するわ。響きが好きなんだ」
と言った。
「……じゃあ、また」
そこまで言うと、翔士は何かを思い出したような顔をして、車から降りた。
「?……忘れ物?」
あたしが聞くと、翔士は「うん」と言って自分の両手であたしの両手を掴み、あたしの唇に自分の唇を押し当てた。
あたしは突然の事に驚きながらも、流れに身を任せた。
そして唇を離すと翔士は照れくさそうに唇の端を片方上げた。
あたしは翔士のその仕草に、軽く目眩した。
翔士は満足気に車に戻った。
「じゃあな」
そう言ってあたしが手を振るのを確認すると、勢いよく走り去った。
あたしは車が見えなくなるまで立っていた。そして姿を消したところで部屋に入った。
お腹がいっぱいで眠い。でもクラブでかなり汗もかいた。あたしは眠い目を擦りながらクローゼットから着替えを取り出し、お風呂場に向かった。
裸になりメイクを落とすと頭からシャワーを浴びた。
翔士はキス以上を求める事はしなかった。もし求められたら、あたしは抱かれてもよかった。そして、じゃあね。またどこかで会いましょ。みたいな。
それでよかったのに。
なのに、あたしにしては珍しく『繋がり』を作ってしまった。
これが翔士の手口なんだろうか。
もし、そうだとしても意外といやじゃないのは、明生と翔士を重ねているからなのか。
そこまで考えて止めた。今は眠気を優先しよう。今日は何も考えずに寝たい。
シャワーから上がり、体を拭いて服を着た。髪を乾かそうとしてドライヤーを手に取ったが、なんとなくダルくて元の位置に戻した。
寝室に入り、ベッドに潜り込むとすぐに心地よい睡魔が体を包んだ。
――ガチャッ
――キィ
――バタンッ
トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン――
その足音は寝室の前で止まり、ドアをゆっくり開けた。
夢の世界に体を半分突っ込んでしまったあたしは、目も開けずに音だけを聞いていた。
その突然の訪問者は上着らしきものをドサッと床に脱ぎ捨てると、ベッドに潜り込んで来て、あたしの背中に張りつくようにくっついた。
「オレ、キキで登録するわ。響きが好きなんだ」
と言った。
「……じゃあ、また」
そこまで言うと、翔士は何かを思い出したような顔をして、車から降りた。
「?……忘れ物?」
あたしが聞くと、翔士は「うん」と言って自分の両手であたしの両手を掴み、あたしの唇に自分の唇を押し当てた。
あたしは突然の事に驚きながらも、流れに身を任せた。
そして唇を離すと翔士は照れくさそうに唇の端を片方上げた。
あたしは翔士のその仕草に、軽く目眩した。
翔士は満足気に車に戻った。
「じゃあな」
そう言ってあたしが手を振るのを確認すると、勢いよく走り去った。
あたしは車が見えなくなるまで立っていた。そして姿を消したところで部屋に入った。
お腹がいっぱいで眠い。でもクラブでかなり汗もかいた。あたしは眠い目を擦りながらクローゼットから着替えを取り出し、お風呂場に向かった。
裸になりメイクを落とすと頭からシャワーを浴びた。
翔士はキス以上を求める事はしなかった。もし求められたら、あたしは抱かれてもよかった。そして、じゃあね。またどこかで会いましょ。みたいな。
それでよかったのに。
なのに、あたしにしては珍しく『繋がり』を作ってしまった。
これが翔士の手口なんだろうか。
もし、そうだとしても意外といやじゃないのは、明生と翔士を重ねているからなのか。
そこまで考えて止めた。今は眠気を優先しよう。今日は何も考えずに寝たい。
シャワーから上がり、体を拭いて服を着た。髪を乾かそうとしてドライヤーを手に取ったが、なんとなくダルくて元の位置に戻した。
寝室に入り、ベッドに潜り込むとすぐに心地よい睡魔が体を包んだ。
――ガチャッ
――キィ
――バタンッ
トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン――
その足音は寝室の前で止まり、ドアをゆっくり開けた。
夢の世界に体を半分突っ込んでしまったあたしは、目も開けずに音だけを聞いていた。
その突然の訪問者は上着らしきものをドサッと床に脱ぎ捨てると、ベッドに潜り込んで来て、あたしの背中に張りつくようにくっついた。