愛しい遺書
食事が終わっても明生は帰ることなく、家に居続けた。

「あたし、買い物行きたいんだけど」

休みの日に必ず買い出しに行くあたしは、まったりとした時間の中切り出した。1分でも長く一緒にいたいという気持ちのせいで、中々口に出せないでいたのだ。

「行ってくれば?」

素っ気なく言う明生の言葉に寂しくなったが、

「そう。じゃあ行って来る」

と、あたしも素っ気なく返し、寝室のクローゼットに向かった。

一緒についてきた明生は、上着を取りに来たのかと思いきや、部屋着を脱いで服を選んでいるあたしのTバックに指を引っ掛け、自分の方に引き寄せた。

「何!?前がおかしな事になってんだけど!」

驚きと恥ずかしさで、あたしの声は大きくなった。

「明生!?」

離れようとすると、明生は後ろから首筋に噛み付いた。

首筋はあたしの急所だ。それを明生はよく知り尽くしている。膝から崩れ落ちそうになったあたしの腰に明生は腕を回し、持ち上げるとベッドに倒した。

「!……明生!あたし買い物……」

そこまで言うと明生はあたしの耳元で「ダメ」と囁き、また首筋に噛み付いた。2度も急所に悪戯されたあたしの体は急速に潤んでしまって、あたしは明生にされるがまま、身を委ねることにした。

汗が滲んだあたしの体に明生の汗が落ちてくる。このままお互い溶けてしまってどっか一ヶ所でもくっついてしまったらいいのに…。

そう思うと、明生の背中を抱くあたしの腕に力が入る。その腕を引き剥がそうとするかのように、明生は激しく腰を振った。

離れないで……。

このままあたしの一部になってよ……。

声に出せない叶わぬ叫びは、いつのまにか快楽の滴となって、ポロポロと目から溢れだした。その顔に明生は興奮したのか、あたしの首筋を強く噛みながら更にベッドを激しく軋ませた。あたしが狂ったように声を上げて鳴くと、明生は獲物を仕留めたライオンのように首筋に噛み付いたままイッた。

「あ。抜くの忘れてた」

息を切らしながら明生は言った。

「……いつものことじゃん」

あたしは鳴きすぎて擦れてしまった声で返した。

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