愛しい遺書
「可笑しい?」

翔士はニヤけているあたしを見ていた。

「うん。可笑しい」

あたしは素直に言うと、

「女みてぇだろ」

と、少し不貞腐れた顔で言った。

「違う。そうじゃなくて、翔士はあたしの思ってる事を少しの狂いもなく気付いてくれるだけじゃなく、感じてる事まで一緒だから可笑しくなって」

あたしはニヤけながら言った。

「なの?オレ今まで女心が全然わかってねぇってばっか言われてた」

翔士は驚いていた。

「なんか、すげぇな。……これきっと……」

「きっと?」

「愛だ。絶対そうだ」

新しい事を発見した子供のような表情で、翔士は言った。時々見せる翔士の子供のような顔。

「可愛いなぁ」

あたしは自然に唇から漏らしていた。

「……オレが!?」

聞き間違えたかと伺う翔士に、あたしは大きく頷いた。

「あぁ、そう……」

と言いながらも、翔士は嬉しそうに耳を赤くした。





翔士の家に着くとガレージに車を入れ、荷物を持って車から降りた。玄関に向かって歩いていると「おはようございます」と、ジョギング中のおじさんがあたしたちに声を掛け、後ろから追い越して行った。あたしたちはつられて挨拶し、2人で顔を見合わせて笑った。

「オレらはこれから寝るんだっつうの」

そう言って翔士は玄関の鍵を開けた。そしてドアを開けるとあたしに「どうぞ」と言った。あたしは「おじゃまします」と言って先に入った。

靴を脱ぎ、玄関に揃えると、リビングに通された。男1人で暮らしている割にはキレイに整頓されていて、家具にも統一感があり「出来る男」といったイメージだ。

「キレイにしてるね」

「そうか?」

そう言って翔士はあたしの手から荷物を受け取り、マチコさんからもらった差し入れをテーブルに置いた。

「着替え、寝室に置いておくから。適当に座って」

そう言ってあたしのバッグを持って行った。

「ありがと」

あたしは自分から一番近い3人掛けのソファーに座った。翔士は戻って来るとまっすぐキッチンに行き、冷蔵庫を開けた。

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