極上な恋をセンパイと。
「ほ、ほんとにすみませんっ」
よりによってセンパイ相手にやらかしてしまった!
その失態に、身に覚えがありすぎる。
あたしは、普段あまり酔わないけど。
一度酔っぱらってしまうと、感情をおもてに出しまくるタイプなのだ。
いたたまれない……。
うな垂れていると、戻ってきたセンパイがドカリとソファに身を投げた。
「朝飯」
「へ?」
オフモードのセンパイが、クイッと顎でキッチンを指示した。
「それでチャラにしてやるよ」
「……」
偉そうだな……。
なんて一瞬思って、フルフルと首を振った。
「キッチン……お借りします」
「どーぞ」
そう言ったセンパイは、ソファからダイニングテーブルへ移動した。
どうやら、あたしのやる事を見るらしい。
……やりにくいな……。
お鍋に火をかけながら、全身に痛いくらいの視線を感じて、顔がジワリと熱くなった。
「お待たせしました」
キレイに磨かれたテーブルにお味噌汁と真っ白なご飯。
焼き魚と目玉焼きを次々と置いた。
センパイは「頂きます」と頷いて箸を手にしながら唸った。
「へえ。お前、やるな」
「え?」
ドキンと心臓が弾む。
ちょっと渋かったかなと思いながらも、ちょうど食材があったから和食にしてしまったのだ。
褒められた事が嬉しくて、性懲りもなく頬が火照ってしまう。
「そ、そうですか?たいしたことないですよ」
思わずニヤケそうになっていたら、お味噌汁をすすったセンパイが一言。
「ばあちゃんち思い出す」
…………ああ、そう。
こうして、センパイの部屋で迎えた朝は。
色気の「イ」の字もなく幕を閉じたのだった。
あたしには、センパイを動かすほどの女としての魅力がないんだなぁ。
そんなことを、つくづく思っていた。