極上な恋をセンパイと。


―――そして。
無理矢理引っ張って来られたのは、女子トイレ。

白鳥百合は、無言でそこまであたしを引っ張ってくると勢いよく振り返った。


「ちょっとアンタ、どういうつもり!!?」

「え?」

――ドン!


大きな瞳がキッと吊り上る。
顔の横に勢いよく伸びてきた手。
白鳥百合に壁ドンと受けながら、あたしは何度も瞬きを繰り返した。


どういうって……つまり、この前どうしてセンパイが先に帰ったか、だよね。

メラメラと燃え上がる炎を白鳥百合の背後に垣間見た。



「あの、念のためにお聞きしますけど、白鳥さんは久遠センパイが好き……なんですか?」

「そんなのあなたには関係ないじゃないっ」

「かっ、関係なくなんか……」



思わずムッとして言い返そうとして、言葉を飲みこんだ。


……関係は、ある。
だって、あたしだって久遠センパイのこと……。

でも、それだけ。
あたしとセンパイの間には何もないんだ。

キスしたのだって、センパイの気まぐれとかで。
意識してるのは、あたしだけみたいだし。

思わず押し黙ったあたしを見て、「ふん」と鼻を鳴らした白鳥百合は腕を組んでその瞳をグッと細めた。


「あたしの方が先に狙ってたんだから、あなたは余計なマネしないでよね」

「……」


すごいな、このギャップ。
あたしには、猫かぶる必要ないって事ね……。

ジト目になったあたしなんかお構いなしで、白鳥百合は言いたい事だけ言ってさっさと行ってしまった。



「はあ……」


ひとり残された女子トイレ。

今後が思いやられて、思わずため息が零れた。
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