極上な恋をセンパイと。

なぜか顔が上げられない。


「……おはようございます」


少しの間を置いて聞こえたセンパイの声。
そのすぐあとに、視界の隅にドカリと鞄が置かれた。


「珍しいな、久遠君がギリギリなんて」

「ええ、まあ。ちょっと捕まってまして」



……白鳥百合だ。


ギッと椅子の軋む音。
それからすぐにパソコンの立ち上がる音。

意を決して、視線を上げた。


「おはようございます」

「……」


あ、あれ？


声をかけても、センパイは目の前の資料を睨んでいる。

その横顔はいつも通り。

でも……。



聞こえなかったのかな……。
もう仕事モードなんだ。

あたしは言葉を交わすことを諦めて、手元のコーヒーをもってデスクから離れた。




「真山くん真山くん」

「はい？」

「あの後、大丈夫だった？」

「あの後？」


コーヒーを片手に真山くんに耳打ちする。
そんなあたしに合わせるように腰をかがめた真山くんが、キョトンと首を傾げた。


コクコクと頷いて「白鳥さん」と囁いた。


と、その瞬間。