極上な恋をセンパイと。

縛り付けられたみたいに固まっていると、突然センパイの気配が遠くなった。



「……」


恐る恐る顔を上げると、離れていくセンパイの後姿が。

ホッとしたような、寂しいような。
そんな複雑な気持ちになって、ちょっとだけ腹が立つ。


なによ……。
あの思わせぶりな態度。
距離感おかしいんじゃないの?

頬を膨らませて、あちこちに跳ねたえりあしを睨んでいると、クルリとセンパイが振り返った。



ビク!


いきなり目が合って、思わず小さく飛び上がる。


そんなあたしに、センパイの切れ長の瞳がグッと細められた。


「お前、俺の話聞いてた?」

「え?」



は、話?

キョトンと瞬きをしたあたしに、センパイは呆れたようにため息をついた。


「今日、あいてるか?」
「へ?」
「このあと予定あんのかって聞いてんの」


予定……。
それって、ご飯に誘ってくれてるのかな。

センパイが? 

ウソ……。



センパイはコピー機から用紙を取り出しながら、ちょっとだけ気だるそうにあたしを眺めた。



「……で。どうなんだよ」

「あいてます!」

「それなら、返事はすぐ返せ」

「は、はい。すみません」



うう、ダメだ。
顔がにやけちゃう。

だって、今あたしから顔を背けたセンパイ。
その頬が、ちょっとだけ赤くなってたような気がしたんだもの。

< 117 / 243 >

この作品をシェア

pagetop