極上な恋をセンパイと。
嬉しかった。
嬉しかったのに……。
「なんで……」
帰る支度を済ませ、オフィスを出るとすぐに猫撫で声が飛び込んできた。
「もぉ、久遠さんったら。あそこのフレンチすっごく美味しいんですよ!早く行きましょうよ」
……フレンチ?
そこにいたのは、一日仕事をしたとは思えないほど完璧な姿の白鳥百合。
たわわに実った豊満な胸を、惜しげもなくセンパイに押し付けている。
腕を引っ張られ、バランスを崩しながらもしっかりと白鳥百合を支えてるセンパイが、その瞳を上げた。
「はぁ……佐伯おせーぞ」
まるで白鳥百合がそこにはいないみたいな感じで、あたしに声をかける。
センパイの腕に絡みついた白鳥百合が、ジトーッとあたしを睨んだ。
……む。
なによなによ、なんなのよ。
今日もあたしは余分に呼ばれたわけ?
無性に腹が立って、ずり落ちそうだった鞄をグイッと肩にかけた。
そして、一言。
「遅れてすみません! けどあたし、たった今めちゃくちゃ大事な用事思い出したんで今日は行けません!」
「は?」
センパイは一瞬ポカンとして、それから眉間にシワを寄せた。
「お疲れ様ですっ」
「あ、おい!」
センパイが何か言いかけたけど、あたしはそのままクルリと踵を返した。
背中に痛いほどの視線を感じる。
でも、あたしはそれを振り切るように廊下を突き進んだ。