極上な恋をセンパイと。
「はい!生おまち」
威勢のいい声と共に豪快に目の前に置かれたのは、今にも泡が零れてしまいそうなビール。
慌ててそれを持って顔を上げた。
「課長、お疲れ様です」
「お疲れさま」
チンと小さくジョッキを合わせた。
すぐ隣には、スーツを脱いだ時東課長。
グイッとビールを仰いだ課長の横顔をチラリと盗み見た。
課長に誘われるなんて、初めて……。
よっぽど疲れてたんだろうか。
ここは駅近くの立ち飲み屋。
カウンターだけの狭い店内は、会社帰りのサラリーマンで埋め尽くされていた。
時東課長はカウンターに体を預けるように腕を乗せると、あたしに視線を落とした。
久遠センパイよりも、少しだけ高い目線。
課長はフワリと目元を緩めると、ビールをクイッと仰いだ。
「はあ。疲れ飛んだ」
「ふふ」
少しおどけるようにそう言った課長の笑顔。
癒されるなぁ。
なんとなくわかってしまった。
もしかしたら課長は、休憩室であたしの様子を見てしまって。
それで、気にして飲みに誘ってくれたんじゃないかって。
……また、心の中が軽くなった。
「ありがとうございます」
「ん?」
「いえ。なんでもないんです。でも、ありがとうございます」
「どう、いたしまして?」
どうしても伝えたくて、そう言うと課長が首を傾げた。
不思議そうなその顔が可笑しくて、失礼かなと思いながらもクスクス笑ってしまった。
そんなあたしを見て、課長の目が一瞬大きく見開かれた。
それからふっと笑うと、まるで懐かしむようにこう言ったんだ。
「そういう所、変わらないな」
え?