極上な恋をセンパイと。


「変わらない?」

「あ」



思わずおうむ返しすると、今度は課長が固まった。
ギョッとして、しまったって顔で。


……もしかして……。
あやふやだった記憶が、パズルのピースのようにパチリとはまっていく。



「課長……時東課長は、わかってたんですか?」

「……」

「あの時の家庭教師……やっぱり課長ですよね?」



確信を持ってそう言うと、しばらく眉間にシワを寄せていた課長が小さくため息をついて、あたしを見降ろした。


「……とうとうバレちゃったか」

「どうして、どうして黙ってたんですか?教えてくれればよかったのに」


身を乗り出して詰め寄ると、そのぶん身を引いた課長が苦笑いを零した。


「すまない」

「ほんとですよ!先生があたしの上司だって知れば姉だって喜びます」

「あはは。お姉さんは何も言ってなかった?」

「?」


何度も瞬きを繰り返す。
課長はちょっとだけズレてしまった眼鏡を押し上げると、ニコリと笑った。


え、え?



「姉とは……今でも?」

「半年くらい前かな。ちょうど佐伯がうちのチームに所属される少し前。それも偶然会ったんだよ」

「……」


姉は、家庭教師の先生に恋をしていた。
姉が高校に合格したら、先生も必然的に来なくなっていて……。

あの頃、姉とは恋愛の話とかはしたことなかったから、その後先生とどうなったのかは知らなかったけど。

そうなんだ。
また、ふたりは再会したんだ……。
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