極上な恋をセンパイと。

なな、なんで久遠センパイがここに?


白鳥百合は?
白鳥百合は、後ろにいるの?

キョロキョロと見渡してみても、そこに彼女の姿はない。



あろうことか、ちょうど隣が空いてふたりはそこへやってきた。

しかもこんな時に要らぬ気を効かせた真山くんが、久遠センパイをあたしの隣へ押しやってきた。


ぞわり、と感じるこのオーラはきっと真っ黒に染まったセンパイの物だろう。

あんなふうに別れた後なのに……。


真山くん……余計なマネを……!


ツーと冷たい汗が背中を伝う。
体が急激に冷えてしまった気がした。

センパイの言う事を無視してきちゃったもの。
さぞかし怒ってるんでしょうね。

自分でも知らないうちに指先がにわかに震えてしまっていて。



「それじゃ、改めて。お疲れ様でーす!」



そんな能天気な真山くんの声が聞こえて、ハッとして顔を上げた。


「お疲れ様」


続いて時東課長の涼やかな声と共に、目の前をビールジョッキが横切って行く。

お、落ち着けあたし!

慌ててジョッキを手にすると、思い切って久遠センパイを見た。


「お、お疲れ様です」


もうこうなったら、どんな嫌味でも受けるんだから!



チン!


小さく、でも無遠慮に押し当てられたグラス。
答える声はなかったけど、それはセンパイのモノ。

恐る恐る見上げた先のセンパイは……。

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