極上な恋をセンパイと。
「お疲れ様です」
いつも通りの声色。
すぐにあたしからグラスが離れ、センパイはビールをゴクゴクと傾けた。
その横顔は、いたって普通に見える。
……あれ?
怒ってない?
「いやー、やっぱり仕事終わりの一杯って最高すね」
「お前、今日は飲み過ぎんなよ」
プハァ!ってビールを一気に仰いだ真山くんに、久遠センパイが呆れたように釘をさす。
それから運ばれてきた料理をみんなでつまんで、早々にお開きになった。
「お疲れさまです」
口々に言ってそれぞれの駅の改札へ向かう。
課長と真山くん、あたしは同じホーム。
「久遠センパイ!お疲れした」
「おー」
真山くんの声に、気だるそうに答えながら去って行くセンパイの背中を茫然と見送った。
「……」
……あはは、拍子抜け。
隣にいたし、目は……合ってないけど。
それでも普通に会話した。
どうして白鳥百合がいなかったのかわからないけど……あたしが行かなくても別にセンパイにとっては、怒る事でもなんでもないんだ。
だから、課長といてもそれもどうでもよくて……。
「なんだ……そうなんだ」
ポロリと零れた言葉が、終電間近の駅の喧騒にかき消された。