極上な恋をセンパイと。
ギョッとして、顔を上げた。
でも……センパイはさっきと同じ。
涼しげな横顔を崩さずに、ただ前を見据えている。
でも……手は……。
「……っ……」
「……」
確かめるように、親指が手の甲をさする。
ゆっくりと、丁寧に……。
こ、こんなに人がいる所で……。
周りの人に、激しく鼓動を刻む心臓の音が聴かれちゃいそうで、思わずギュッと目を閉じた。
胃の浮くような感覚がして、エレベーターが止まる。
扉が開くと同時にたくさんの人が吐き出されていく。
それと同時に、右手も解放された。
甘く、それでいて強引にあたしの手を掴んでいたセンパイは、呆気なく他の人と降りてしまった。
な、な……。
「~、~……意地悪」
振り回されてる事が悔しくて、思わずその背中に呟くと、扉が閉まる一瞬だけアーモンドの瞳があたしを捕えた気がした。
くやしい。
―――細い細い、今にも切れてしまいそうな危うい糸。
あたしはその上で、落ちないようにとなんとか立っている。
向こう側には、慌てるあたしを可笑しそうに眺めるセンパイがいて。
……そんな構図を、思い浮かべてしまった。