極上な恋をセンパイと。

それから3時間半。
ようやくあたし達は、目的地、草津温泉へと到着した。


「わあ、あれなんですかね?」


窓越しに見える景色に、思わず身を乗り出した。


「ああ、湯畑だね」

「ゆばたけ?」


穏やかな声。

首を傾げると、視線を外に向けたまま時東課長が言った。


「あそこが源泉で、温泉が流れる所に樋を渡して、温泉が流れるようにしてあるんだよ。で、年に数回、その樋から湯の花を採集するらしいよ。だから湯畑って呼ばれてるみたいだね」


「へえ……そうなんですね」


時東課長はなんでも知ってるな。
さすが、先生だ。

なんて感心してると、ふいに視線を感じた。


ん?


「……」



見回してみても、視線が合う事はなくて……。
あれ、気のせいかな。


そう思う事にして、もう一度席に座りなおした。

そうしているうちに、バスはすぐに宿泊先の旅館に到着した。



「年々グレードアップしてますね、部長」


バスから降りてきた真山くんが、茫然と呟いた。

それもそのハズ。

だって……こんなに立派な温泉宿、泊まった事ない。
大自然に囲まれて静かに佇むそこは、幻想的にも見えた。


とりあえずそこで解散したあたし達は、それぞれ各部屋へ向かった。
畳敷きの回廊は、純和風。
立派な日本庭園の中庭を眺めながら進んだ。



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