極上な恋をセンパイと。
と、その時。
視線を感じて顔を上げた。
「……な、なに?」
見ると、白鳥百合がジーッとあたしを睨んでいる。
「どうしてあなたなの?」
「え?」
意味が分からなくて、首を傾げると白鳥百合は大きくため息をついた。
「どうして久遠さんはアンタなの?どっちかっていうと”普通”のアンタを」
「普通で悪かったわね。……ケンカ売ってます?」
「事実でしょ? あたしを見なさいよ。才色兼備ってのはあたしみたいなのを言うの」
「……それ、自分で言う?」
ほんと、何言ってるの?
久遠センパイがなんだってのよ。
確かに、おもちゃだって思われてる気はするけど……。
それって、面白がってるだけじゃないのかな……。
乳白色に揺れるお湯を見つめていると、うんざりしたような声で白鳥百合が言った。
「はぁーあ。そうやってずっと受け身でいればいいわ。あたしはそんなの嫌。欲しいものは欲しいし。手に入れるためならなんだってするんだから。
だから、今日もしあたしが久遠さんと部屋に入ったら、そこは察してよね」
「……ど、どういう事?」
「わかんないならいいわ。とにかく部屋は明け渡して」
「……」
思わず押し黙る。
言い返したいのに、白鳥百合の強い想いに言葉が出てきてくれなかった。
……受け身……?
あたしだって……、あたしだって久遠センパイが欲しいよ……。
からかわれるんじゃなくて、愛されたい。
センパイに大事にされるって、どんな感じなんだろうってずっと思ってる。
「……」
さっさと出て行く白鳥百合の足音。
流れるお湯の音と木々を揺らす風の音が、それをすぐにかき消してしまった。