極上な恋をセンパイと。


「はあ……」


集まりから抜け出して、中庭が望める回廊に出た。
小さくため息を零せば、少しだけクラクラした。


ちょっと酔っちゃったかな。

ソファに座ると、なんだか肩の力が一気に抜けた。
変に気を張ってたのかもしれない。


大きな満月が、ぽっかり空いた夜空から覗いている。
ゆっくりと流れる薄い雲が、時々その月を隠していた。



「あれ、渚さん!」

「?」


呼ばれて顔を上げると、そこには頬を上気させた真山くんが立っていた。


「渚さんも休憩ですか?」

「うん、まあそんなとこ。真山くんも?」

「俺は、トイレに行ってきたんですよ」


ニコニコと人懐っこい笑顔を浮かべて、真山くんは当たり前のようにあたしの隣に腰を落とした。

真山くんも温泉に入ったようで、いつもゆるふわにセットしてある髪があちこちに跳ねていた。

元々猫っ毛なのかな。

月の光で照らされたその髪は、まるで宝石のように光っている。


ぼんやりしていると、不意に真山くんと視線がぶつかった。

どうやら、彼もあたしを見つめていたらしい。

目が合うと、真山くんが途端にふにゃりと表情を崩す。


「いや~。いいですね」

「? なにが?」

「何って!浴衣ッスよ」

「ああ、これ?」


かぶせるようにそう言われ、袖を持ち上げて見せた。

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