極上な恋をセンパイと。


「いませんね……」

「……」



すぐに追いかけなかったのがいけなかった。
あたし達は、センパイを見失っていた。

広い旅館だけど、でも向かう場所はきっと……。



「ね、久遠センパイの部屋ってどこ?」

「へ?」

「真山くん、同じ部屋じゃなかった?」

「いえ、センパイは柘植さんと同じ部屋ですよ」

「どこかわかる?」

「はい。でもなんで……って、ま、まさか」



がーん。

わかりやすいくらい、真山くんの顔から血の気が引いて行く。


「ちょっとしっかりしてよ!諦め、悪いんでしょ?」

「……はい。俺、諦め悪いんです」


思い出したように、言い終わると真山くんはキュッと唇を引き結んだ。


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