極上な恋をセンパイと。
∟和泉side
◇和泉side
薄暗い部屋は、畳の香りで溢れていた。
月光が大きな窓から差し込んでいるのを眺めてから、小さく息をつく。
「それでこんな場所まで来て話ってなに?」
振り返りざまにそう言うと、部屋の入り口で佇んでいた人物が挑発的に笑った。
「久遠さん、わかってるんでしょ?」
「……」
影から月夜に照らされたのは、うちの会社の受付嬢。
名前はたしか白鳥……だったっけ。
俺の反応をうかがうように上目使いで見つめられ、たまらずにもう一つため息が零れた。
「女が男の部屋に来る理由なんて、ひとつに決まってるじゃないですか」
「理由、ねえ」
なんか勘違いしてるみたいだけど、俺はあんたには興味ない。
そう言う意味で目を細めると、白鳥百合はゆっくりと腕を伸ばしてきた。
スルリと柔らかい感触が腕に絡みつく。
執拗に身体を押し付けられて、うんざりした。
甘ったるい香水が鼻につく。
「好き……久遠さん。あたし、久遠さんが好きなの」
……。